首や肩の重さ、頭の前の落ち込み、呼吸の浅さ。ここ数年、これらの悩みを抱える人は年齢を問わず急増しています。
そしてその大きな原因こそ、スマホ首(ストレートネック)です。
ダンス指導歴20年以上の私たちの結論はシンプルです。
スマホ首は、1分の正しい使い方の積み重ねで、必ず改善方向に向かいます。
特別な道具は必要ありません。必要なのは「気づき」と「少しの習慣」だけ。この記事では、その考え方と具体的な1分習慣を、プロダンサーの視点から丁寧にお届けします。
序章|スマホ首は“現代の生活病”。でも、改善は決してむずかしくない。
首や肩の重さ、頭の前の落ち込み、呼吸の浅さ。ここ数年、これらの悩みを抱えている人は、年齢を問わず本当に増えました。
そしてその大きな原因が、いわゆる スマホ首(ストレートネック) です。
スマホ、タブレット、パソコン、オンライン会議。私たちの生活は、以前よりもずっと、うつむき姿勢・前のめりの姿勢に囲まれるようになりました。
ただ、ダンス指導歴20年以上、何千人もの身体を見てきた私たちが強く感じていることがあります。
プロダンサーとしての結論
スマホ首は、1分の正しい方向への刺激の積み重ねで、必ず改善方向に向かいます。年齢に関係なく、「今から」でも遅くありません。
首だけが悪いのではありません。頭の位置、背中の丸まり、肩の上がり、胸の落ち込み、そして呼吸の浅さまでが全部つながっています。
私たちの感覚で言うと、
首の不調のほとんどは、首そのものではなく、背骨全体の「連動の乱れ」が原因です。
だからこそ、スマホ首の改善は「首だけストレッチ」ではうまくいきません。頭の位置・胸椎・肩甲骨・呼吸……これらを一緒に整えていく必要があります。
読み方のお願い|“一気に読まなくていい”記事です
この記事は、あなたの首と肩を守るための内容です。だからこそ、本来は……
この記事を長時間読み続けることは、あまりおすすめしません。
スマホ首について学びながら、そのスマホやPCを見る時間が長くなってしまうのは、本末転倒だからです。
そこで、ひとつだけお願いがあります。
この記事の“理想の読み方”
- 必要だと感じた章だけ、少しずつ読む
- 途中で何度も、画面から目を離す
- 動きを紹介している部分は、読みながらその場で試してみる
ダンスのレッスンでも、私たちはよくこうお伝えします。
「集中しすぎると、身体の感覚が消えてしまいます。」
姿勢も同じです。文章だけを追いかけ続けず、ときどき身体に意識を戻す時間を挟みながら読んでいただけたら嬉しいです。
☕️ ちょっとひと息
ここまで読んだら、3秒だけ画面から視線を外して、首・肩・背中の力をふわっと抜いてみてください。それだけで、この記事による負担はほとんどゼロになります。
第1章|スマホ首が起こる理由と“3つの悪循環”
スマホ首は、突然の痛みとして現れるように感じるかもしれません。しかし実際には、
「小さな姿勢のクセの連続」が積み重なった結果
として、ある日“限界”が表面化したものです。
その背景には、大きく分けて3つの悪循環があります。
① 頭の重さはボーリング玉。角度がつくほど負荷は倍化する
人の頭の重さは、およそ4〜5kgと言われています。これは、大きめのボーリング玉と同じくらいです。
この頭が、たった15度前に傾くと首にかかる負担は約12kg、30度で18kg、45度では25kgにもなります。
つまり、スマホやPCの画面を「少しのぞき込む」だけで、首は自分の頭の重さ以上の負荷を支え続けていることになります。
多くの人は、首の痛みや重さの原因を「首の筋肉が弱いから」と考えがちですが、本質的には、
頭の位置(重心のズレ)が最初の崩れ
なのです。
② 背中(胸椎)が固まると、首だけが過労状態になる
スマホ姿勢が続くと、背中が丸まり、背骨の真ん中あたりにある胸椎の動きが少なくなります。
本来、頭や上半身の重さは「背中全体」で受け止めるはずです。しかし胸椎が固まると、その役割を果たせません。
その結果、本来は分散されるはずの負担が、首だけに集中してしまいます。いわば、首が一人で残業しているような状態です。
プロダンサーの世界では、
「胸椎が立つか、寝るかで、首・肩・骨盤の負担は劇的に変わる」
というのは常識です。胸椎が潰れている限り、いくら首だけケアしても、すぐに元通りになってしまいます。
③ 呼吸が浅くなる → 自律神経が乱れる → 姿勢がさらに悪化する
頭が前に出ると、肋骨が下がり、横隔膜がうまく動かなくなります。その結果、呼吸は浅くなり、胸やお腹の動きは小さくなります。
呼吸が浅い状態が続くと、
- 眠りが浅い・夜中に目が覚める
- 朝起きてもスッキリしない
- 集中力が続かない
- 肩や首の重さが「標準装備」のようになっている
といった不調が出やすくなります。
レッスンで生徒さんの身体を見ていると、胸が下がって呼吸が浅い方は、踊り全体に「重さ」が出て、すぐに疲れてしまう傾向があります。
姿勢は呼吸をつくり、呼吸は姿勢をつくる。
このループが乱れることで、スマホ首は加速度的に進行してしまうのです。
👀 視線リセットタイム
ここで2秒だけ、画面から目を離して、部屋の中の“少し遠くのもの”を1つ見てみましょう。目のピントが変わると、首まわりの緊張も自然にふっとゆるみます。
第2章|最初にやるべきは“頭の位置リセット”
スマホ首を改善しようとしたとき、多くの人が真っ先に取り組むのが、首や肩のストレッチです。もちろん、それも悪くはありません。
しかし、実は順番が逆です。
最初に整えるべきは、「頭の基準点」です。
この基準点を取り戻すだけで、首や肩の疲労感は大きく変わります。
① 壁立ちチェック(15秒)で今の状態を知る
まずは、自分の頭の位置がどれくらい前に出ているかを知るところから始めましょう。
壁に背中を向けて立ったとき、本来は次の4点が自然に触れるのが理想です。
- 後頭部
- 肩甲骨
- お尻
- かかと
もし、後頭部だけがどうしても壁につかない、あるいはかなり力を入れないと届かない場合、それは典型的なスマホ首のパターンと言えます。
② 後頭部だけをそっと壁へ寄せる(20秒)
次に、背中や骨盤の位置はそのままにして、後頭部だけをそっと壁に近づけていきます。
このときのポイントは、
- 首を反らさない(顎だけをグイッと上げない)
- 背中の形はできるだけ変えない
- 力で押しつけるのではなく、「位置を思い出す」くらいの感覚で
首を頑張って反らせるのではなく、頭の重心をやさしく「本来の位置」に戻していくイメージです。
③ 後頭部を真上へ軽く伸ばす(15秒)
後頭部が壁に触れたら、次は「方向」を整えます。
顎を強く引く必要はありません。むしろ、
「後頭部の上に細い糸がついていて、ふわっと真上に引かれている」
ようなイメージを持つと、自然で美しいラインになります。プロダンサーがよく使うイメージです。
顎をぐっと引きすぎると、首の前側が詰まり、かえって苦しくなってしまうので注意しましょう。
④ 仕上げの呼吸(10秒)で頭の位置を“定着”させる
最後に、頭の位置を定着させるようなイメージで、胸に向かって呼吸を入れていきます。
- 鼻からゆっくり息を吸い、胸や肋骨の横がひらく感覚を味わう
- 口または鼻から、ゆっくり息を吐きながら、頭の位置がその場に落ち着いていくイメージを持つ
これで、「頭の位置リセット」は完了です。ここまでわずか1分弱で終わります。
この章は、読者の多くが実際に動きながら読み進める部分なので、あえて別の休憩ポイントは置かず、「動きそのものが休憩」になる構成にしています。
第3章|首と肩が軽くなる“1分リセット”4選(プロダンサー実践)
ここからは、プロダンサーである私たちが、練習や本番前に必ず行っている「首と肩を軽くする1分リセット」を4つ紹介します。
どれも道具いらずで、その場でできるものばかりです。全部を完璧にやる必要はありません。気に入ったものを1つか2つだけ選んで、日常の中に溶かし込んでいきましょう。
① 胸をひらく“胸椎リフト呼吸” —— 首を整える土台
スマホ首の根本原因のひとつは、背中(胸椎)が前に潰れ、呼吸が浅くなることでした。そこで最初に整えたいのが、「胸椎を立てる呼吸」です。
やり方(30秒)
- 立つか、浅く椅子に座る
- 胸の真ん中(胸骨)に軽く手を添える
- 肋骨の横が広がるように息を吸う
- 息を吐きながら、胸が「斜め上」にふわっと持ち上がるイメージを持つ
胸をぐっと張る必要はありません。ほんの数ミリ、胸郭全体が持ち上がるだけで十分です。胸椎が立つと、その上に乗っている首は自然と正しい位置に近づいていきます。
② 肩甲骨の“下制” —— 肩を引かず、ただ落とす
スマホ首の人の9割以上に共通しているのが、「肩がすくんでいる」状態です。ここで大切なのは、
肩を後ろに「引く」のではなく、「落とす」こと。
イメージとしては、肩甲骨の下角(下の尖った部分)が、後ろへスッと滑り、そのままストンと下に落ちていくような感覚です。
ポイント
- 胸を張りすぎない
- 肩を力で下げようとしない
- 息を吐きながら、「肩甲骨の重さにまかせて落ちていく」イメージを持つ
肩がストンと落ちると、首の付け根のつまりが軽くなり、同時に呼吸も入りやすくなります。
③ 首の前側ストレッチ(胸鎖乳突筋) —— 頭が前に出る“根っこ”をゆるめる
スマホ首で最も固まりやすい筋肉が、耳の下から鎖骨に斜めに走る胸鎖乳突筋です。ここが硬いと、頭は前へ前へと引っ張られてしまいます。
やり方(片側20秒)
- 片手で同じ側の鎖骨を軽く押さえる
- 首を反対側にゆっくり倒す
- そこから顎をほんの少し(5度程度)上に向ける
- 痛気持ちいいくらいの強さで20秒キープする
顎を上げすぎると首の後ろ側を潰してしまうので、「ほんの少し」だけ上を向くのがコツです。
④ 天使の羽スライド —— 肩甲骨の軌道を整える
肩甲骨が自然に中央へ寄り、下へ落ちていく「正しい位置」を思い出す動きです。椅子に座ったままでも行えます。
やり方(30秒)
- 椅子に浅く座り、背筋を軽く伸ばす
- 両肩を後ろへスッと滑らせる(肩甲骨を寄せる)
- そこから肩甲骨をストンと下へ落とす
- その姿勢のまま、深い呼吸を3回繰り返す
肩甲骨の位置が整うと、首は「勝手に」軽くなっていきます。首や肩に直接アプローチしていないのに、ラクになるのがこの動きの面白さです。
第3章も、読者が実際に身体を動かしながら読み進めるパートなので、ここではあえて別の休憩ポイントは挟まず、「動きそのものが休憩」になるように設計しています。
第4章|デスクワーク中に首を守る“ながら姿勢”5選
スマホ首と聞くと、「スマホを見ている時間」が悪者にされがちです。しかし実際には、
長時間のデスクワークの固定姿勢
が、大きな影響を与えているケースも少なくありません。
首は「動いているとき」より、「止まっているとき」のほうが疲れます。だからこそ、仕事中・作業中の“ながら改善”がとても大切です。
① 画面の高さは「目の高さ+5cm」を目安に
画面が低ければ低いほど、首は前に出ます。ノートPCを机の上にそのまま置いて作業していると、知らないうちに頭がどんどん前に滑っていきます。
目安としては、
- 画面の上辺が「目の高さ+5cm」くらい
- 目線は「やや下を見る」程度におさまる高さ
に調整できると理想的です。ノートPCならスタンドを使う、外付けモニターを少し高めに設置するなど、道具の力も借りながら環境を整えていきましょう。
② 肘を体に近づける —— 肩の緊張を一気に減らす
肘が前に出るほど、肩は上がりやすくなります。マウスやキーボードが遠い位置にあると、無意識のうちに肘が前へ引き出され、首まわりの緊張がじわじわと増えていきます。
そこで意識したいのが、
- 肘を身体の側面に軽く寄せる
- 椅子の肘置きや、クッションに前腕を預ける
- マウスやキーボードを「自分のほうへ」引き寄せる
腕の重さを「筋肉で支える」のではなく、「机や椅子に預ける」感覚がポイントです。
③ 15分に1回、視線だけ遠くに向ける(5秒でOK)
首こり・肩こりの原因の半分は、「視線が近くに固定され続けること」だと言ってもいいくらいです。ずっと近くの画面を見続けると、目の筋肉も首の筋肉も同時に固まってしまいます。
そこで、タイマーを使ってもいいので、
- 15分に1回だけ、画面から目を離して
- 数メートル先の物を5秒ほど眺める
という小さな習慣を入れてみてください。たったこれだけでも、夕方の首・肩の疲れ方がガラッと変わります。
④ 呼吸で胸を起こす(胸郭リフト)
背中が丸くなり、胸が落ちたまま作業を続けると、頭は必ず前へ出ていきます。そこで、動きは最小限に、呼吸だけで姿勢を整えていきます。
方法は、とてもシンプルです。
- 肋骨の横が広がるように息を吸う
- 息を吐きながら、胸の前がふわっと上に持ち上がるイメージを持つ
たった数回でも、胸椎が起きてきて、首の角度が自然と変わります。
⑤ 骨盤を立てる習慣が首を守る
骨盤が後ろに倒れると、そのバランスを取るために、頭は前に出ていきます。つまり、骨盤と首は常にセットで動いているのです。
椅子に座るときのポイントは、
- 坐骨(お尻の下の骨)に体重を乗せる
- お尻をほんの少しだけ後ろへ引く
- 背骨を「伸ばす」というより、「上に浮かせる」ような軽い感覚を持つ
骨盤が立つと、背中が立ち、その上に乗る首も自然に整っていきます。逆に言えば、骨盤が倒れている限り、いくら首だけを直そうとしてもいたちごっこになってしまいます。
💺 姿勢リセットミニブレイク
いま座っている方は、いったん背もたれから背中を離して、肩をストンと落としてみてください。2秒で OK です。座り方を「少しだけ」整えるだけで、首への負担はかなり軽くなります。
第5章|スマホ首にならない“1日の習慣設計”
ここまで見てきたとおり、スマホ首は単なる「姿勢の悪さ」というより、
1日の中で同じ姿勢が続きすぎる「リズムの問題」
でもあります。
そこで最後に、スマホ首になりやすい人が今日から取り入れられる「1日の習慣ルーティン」をご紹介します。
特別なことではなく、どれも1分以内でできる“小さな癖づけ”です。
① 朝:胸をひらく呼吸(30秒)で、その日の姿勢が変わる
起床後は、寝ているあいだの姿勢の影響で、胸椎がやや固まりやすいタイミングです。そのままスマホを見始めると、一気にスマホ首モードに入ってしまいます。
そこで、ベッドから起き上がったら最初に「胸をひらく呼吸」を入れてみましょう。方法は、第3章でご紹介した胸椎リフト呼吸と同じです。
朝の30秒で胸がひらくと、その日1日の姿勢が軽く変わります。
② 昼:肩を落とす“5秒リセット”
昼の時間帯は、仕事や家事に集中している人が多く、「いつの間にか肩が耳の近くまで上がっている」状態になりがちです。
そんなときは、
- 一度だけスーッと息を吸って
- 吐きながら肩をストンと落とす
これだけで構いません。5秒でできるリセットです。
③ 夜:スマホは胸より上で見る
一日の終わり、ソファやベッドでゴロゴロしながらスマホを眺める時間は、同時に首にとっては一番の“正念場”でもあります。
ここで意識したいのは、
スマホを「胸より上」の高さで見ること。
両肘を太ももに乗せる、クッションや肘置きに腕を預けるなど、スマホを支える位置が高くなるよう工夫すると、首の角度はそれだけでかなり守られます。
④ 寝る前:首の前側ストレッチ(30秒)で睡眠の質も上げる
胸鎖乳突筋が柔らかい人は、寝返りがスムーズで、睡眠も深くなりやすいと言われています。スマホ首のケアと、睡眠の質向上を同時に狙えるのが、寝る前の首前ストレッチです。
やり方(ベッドの上でOK)
- あぐらや正座、または椅子に座る
- 鎖骨に軽く手を当てる
- 首を反対側にゆっくり倒し、顎をほんの少し上げる
- 片側30秒ずつ、痛くない範囲で伸ばす
これを寝る前の習慣にするだけで、首の前側の縮みがとれ、頭の位置が戻りやすくなります。
⑤ 1日の終わりに“姿勢の振り返り”を1分だけ
習慣化の研究でも、「振り返り」の時間を持つことで、行動が続きやすくなることがわかっています。スマホ首のケアも同じです。
寝る前の1分で、こんな質問を自分に投げかけてみてください。
- 朝は、胸をひらく呼吸ができただろうか?
- 昼は、肩が上がりっぱなしになっていなかったか?
- 夜は、胸より上の高さでスマホを見られただろうか?
正解・不正解をつける必要はありません。ただ「今日の自分の姿勢」に一度意識を向けることで、明日の身体の使い方が少しずつ変わっていきます。
🌙 おやすみ前の深呼吸
ここまで読んだら、目を閉じて一度だけ深く息を吸い、ゆっくり吐いてみてください。胸がふわっとひらけば、今日一日の首・肩への負担が、少しだけ軽くなっています。
第6章|まとめ:首は“1分の積み重ね”で確実に軽くなる
スマホ首は、単なる「姿勢の悪さ」の問題ではなく、
日々の「身体の使い方のクセ」が積み重なった結果
として起こるものです。
つまり、使い方のクセが変われば、首は必ず変わります。
そのためのキーワードが、この記事で繰り返してきた、
- 頭の位置リセット
- 胸椎(背中)の連動
- 肩甲骨を「引く」のではなく「落とす」感覚
- 呼吸で胸をひらくこと
- 1日のリズムの中に「小さな1分習慣」を散りばめること
これらが整ってくると、首や肩の重さは「いつの間にか」軽くなっていきます。
大切なのは、完璧を目指すことではありません。この記事の中から、
「これならできそう」と思えたものを、1つだけでも選んで続けてみること。
あなたの身体は、今日からいくらでも変わっていきます。10年先の首と肩のために、まずは今日の1分から始めてみてください。